野球大喜利「アサ芸杯」の第16シーズンの結果は以下の通りです。 〈第301回戦〜第320回戦までの期間で集計〉


☆「アサ芸杯」とは☆
ツイッター野球大喜利(@89_ogiri)の優秀投稿作品に、主催者の漫画家・カネシゲタカシが絵とコメントをつけて『週刊アサヒ芸能』に掲載させていただく雑誌連動型企画。20週を1シーズンとし、ポイント制でランキングを競います。上位3名には賞金を授与。皆さんのご参加お待ちしております!(投稿規約はこちら

順位 選手名
1 ko_do_mo 56
2 G88man 45
3 marine_yamada 44
4 Sovpool23 34
4 beniimo47 34
6 gaddemukatuku42 28
7 taraco 26
8 gull_bp 25
9 omanjyuu3 23
10 realbandoh 22


【総評】
 今回で第16シーズンが終了。ko_do_mo選手が3季連続7度目の優勝を果たした。なお3季連続は史上初の快挙である。そして2位はG88man選手。前回6位からクリーンアップ返り咲き。実力を見せつけた。そして2位と激しいデッドヒートを繰り広げたmarine_yamada選手が3位に。三者とも優勝経験者。ベテラン勢の意地と意地がぶつかりあう熱いシーズンだった。

※ ※ ※

まずは総括が遅れたことを率直にお詫びしたい。楽しみにしている大喜利ーガーも多いためなんとか続けていきたいとは思っている。

今季はベテラン勢の上位独占というシーズンだった。大喜利ーガー諸氏においては「なぜ私の投稿は選ばれないのか」「採用にコツはあるのか」など日頃から疑問に思ったり悩んだりしている人も多いだろう。そういうツイートを散見したこともある。今回の総括はそのあたりにスポットを当てて徒然なるままに書いてみようと思う。

大喜利で大切なのは、「発想」「テクニック」のバランスである。常連の大喜利ーガーとなるには、このふたつを高いレベルで揃える必要がある。

お題が投じられた瞬間、反射的に浮かぶのが「発想」だとすると、それを適切な文言にまとめあげるのが「テクニック」だ。テクニックは、より具体的にいえば「短くキレ良い言い回し」「誤字脱字の回避」「ネット用語の回避」などなど。大喜利的国語力と言い換えてもいいだろう。

多くの大喜利ーガーはボールをバットに当てた段階で満足し投稿してしまっているのだが、よっぽど強い「発想」がない限りボールは飛ばず内野ゴロとなる。また外野に飛んだと思われる打球も、多くは「ネタかぶり」という名のフェンスに阻まれるなどして、簡単にスタンドには飛び込まない。

しかし、仮に「発想」がそこそこのネタであっても、「テクニック」さえあれば数多のライバルに差をつけ、スタンドに放り込むことができる。また「発想」も「テクニック」も程度の差はあれ鍛錬が可能だ。近道なのは「テクニック」を磨くことだ。

今回の総括では上位ランカーたちの発想とテクニックに注目してみたい。上位ランカーのスイングをお手本にすることは上達への最短道である。よりガッツリ学びたい方のために教科書も用意しておいた。




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以下では第15シーズンで歴史に名を刻んだベストナインたちの健闘を、選手名鑑風にたたえたい。


【1位】ko_do_mo選手(56打点)
野球大喜利通算打点で2位以下に100打点近い差をつけてトップに君臨。絶対的王者である。その圧倒的な発想力とテクニックが顕著に出たのが310回戦「こんな甲斐キャノンはイヤだ」であろう。

・みんな甲斐キャノンというが、実は柳田バキュームである(4打点)
・千鳥が九州の営業の時だけ「イカ2貫」のところで代わりに使う(3打点)

まずはMVP獲得の4打点ネタ。「甲斐キャノン」で誰もがその肩に注視するところを「センター柳田のバキューム力」に発想を転換する大技。これは只者ではない。柳田という配役も正解。「今宮」や「今宮のグラブに掃除機がついている」よりも強力である。
そして見逃しがちなのが、この発想を的確にスタンドに持っていくテクニック、すなわち大喜利的国語力だ。仮に「柳田が吸い込んでいる」という発想にたどり着いたとしても、回答が「じつはセンターの柳田が吸い込んでいた」等の文言なら、採用はあれどMVPには至らない。お題の「甲斐キャノン」の対義語で「柳田バキューム」という全くの新語を作ってしまうあたりに非凡なテクニックがあるのだ。

また「イカ2貫」に関しても伝わるか伝わらないかギリギリをチョイスする発想センスはもちろんだが、「九州の営業の時だけ」というディティールも提示するテクニック。ここを見逃してはいけない。実はこれも蛇足になるかならないかのギリギリ。取捨選択のセンスに感嘆するしかない。

なお、こども選手は毎回アサ芸発売にあわせて独自の総括をツイートしている。野球大喜利でもリツイートしているので楽しみにしている諸氏も多いだろう。このような大喜利ーガーによるマイ総評は監督としても大いに参考になるので、ぜひいろんなリーガーにつぶやいていただきたいと思っている。


【2位】G88man選手(45打点)
上位ランカーは「発想」と「テクニック」のバランスが高いレベルで取れているものだが、G88man選手の整えるテクニックはあまりに突出している。7打点を叩き出した308回戦「巨人復帰の原監督、足りないフレッシュ感を演出しようとして大失敗。何をした?」での、じーはち選手の投稿をみてみよう。

・「おい」を感じさせないように菅野を放出(4打点)
・サードコーチャーに「亀井をとめるな!」と新進気鋭の監督感を演出(3打点)

思わず「うまい!」と唸らせるMVPネタ。原監督といえば甥っ子の菅野投手だが、「おい」と「老い」をひっかけ、さらにそんなエースを放出することで「フレッシュ感を演出しようとして大失敗」というお題に最大限ふさわしい投稿になっている。そんな発想もさることながら、これらを最低限の文字数でスッキリ表現する高いテクニック、これこそがじーはち選手の真骨頂だ。「菅野をトレードに出してしまう」など、冗長な文言になりがちなところを「菅野を放出」と体言止めでスッキリさせる、このあたりのテクニックは誰でも応用可能である。
また「亀井をとめるな!」など、旬のネタを巧みに取り入れて採用にこぎつけるあたりも高いテクニックを感じさせる。瞬発力よりも熟考力でいまの地位を確立している戦略的大喜利ーガーのひとり。多くの選手がお手本とすべきである。



【3位】marine_yamada 選手(44打点)
惜しくも1打点差で3位に甘んじたミスター野球大喜利(ミスターSASUKE的な意味で)ことやまだしょてん選手。知力とバカを適度にブレンドさせた発想力、そして高い大喜利的テクニックだ。

お題:こんなバッティングピッチャーは嫌われる
回答:ネット裏で嫁さんと浮気相手がバッティングして制球が定まらない

「バッティングピッチャー」にひっかけて、予定がかちあう意味のバッティングが浮かぶ、この時点で安易に投稿しては「ネタかぶり」の海に沈む可能性が高い。実際に「バイトとバッティングして出られない」「他球団の練習とバッティングしている」などの回答が多数見受けられた回だった。
ここでライバルに差をつけるのが、さらなる発想とテクニックだ。まず、数あるバッティングのなかで「嫁さんと浮気相手がバッティング」という緊迫感あふれるシチュエーションを持ち出す発想力が良い。さらに「ネット裏で嫁さんと浮気相手がバッティングしている」だけでも成立しているところに「制球が定まらない」という邪魔にならないオチをくわえてフォトジェニックに仕上げるテクニックが見事である。
オールラウンドかつ豊富な野球知識も武器となっている。ミスターの牙城は崩れそうにない。


【4位】Sovpool23 選手(34打点)
ついにベテラン勢を脅かす地位までやってきたソバプール選手。適度に毒気を含んだ発想力の高さも素晴らしいが、今回の総括では「キレ味よい文言」を揃えるテクニックに注目してみた。

お題:FA交渉の場で「この選手、絶対ウチ来る気ないな~」と球団幹部が思った理由
回答:両目に楽天カードを貼ってきた(4打点)

お題:巨人復帰の原監督、足りないフレッシュ感を演出しようとして大失敗。何をした?
回答:「ネオ辰徳」を全面に打ち出したが根尾は外した (3打点)
回答:HIKAKINと組んでTEGIREKINを名乗った(3打点)

余計な装飾を一切とっぱらい、短い文言でスパンと振り切る小気味よさが素晴らしい。ネタの内容も巧みに時事ネタを織り込むなど採用への創意工夫が感じられる。MVPとなった楽天カードマンネタなどは、早々に西武から楽天へのFA移籍を決め、オリックスとは交渉の場にすらつかなかった浅村選手を品よくいじっている。さらなる飛躍がたのしみである。




【4位】beniimo47 選手(34打点)
ツボをついたときの破壊力は誰もが知るところ。第309回戦「『僕が一番、ガンダムをうまく使えるんだ!』みたいな野球人の名言」という難解なお題で8打点の荒稼ぎ。そのプレーの一部を見てみよう。

・岡田幸文「僕が一番、ホームランをうまく…ごめん、ホームラン打ったこと無かったわ!」(3打点)
・巨人ファン「仁志が8番、掛け算をうまく使ったんだ!」(3打点)

「僕が一番」で始まる王道もよし、「仁志が8番」で始まる応用もよし。変幻自在に立ち回ることでマルチヒットを生み出した。また第316回戦「野球バカから届いた年賀状はここがひどい」のマルチヒットもみてみよう。

・「ネットで送った」とは聞いたが、まさかバックネットに印刷されているとは (3打点)
・平成2年の午年から始まった駒田のバッティング連続写真シリーズが今年ついに完結した (2打点)

両者ともに発想のぶっ飛び方も素晴らしいが、とくに前者。「まさかバックネットに印刷されているとは」という感情豊かな文言で打球にスピンをかけ、さらに遠くに飛ばした。
まだまだ荒削りなものの、スイングの強さは折り紙付き。クリーンアップ返り咲きを狙いたい。



【6位】gaddemukatuku42選手(28打点)
孤高の大喜利ーガーが今回も好位置につけた。301回戦「野球バカ専用デジカメに搭載された、あっと驚く最新機能とは?」のマルチヒットをリプレイでみてみよう。

・頭皮を盛ってテカテカにデコれるアプリ「sanow(サノー)」を搭載(3打点)
・イースラー映えする (2打点)

競争率の激しいダジャレ・言葉遊び的ボケは、最終的にはバカ度で優劣が決まりやすい。ここでは「snow」と「サノー(佐野慈紀)」、「インスタ」と「イースラー」というかけ離れたコントラストがバカ度を演出している。
また「サノー」に関して。たとえば「snowならぬsanow機能がついている」などの投稿では「ボケっぱなし」かつ「弱い」。ここに「頭皮を盛ってテカテカにデコれる」というガイド文をつけるところが技ありなのだ。
一方で「イースラー映え」はボケっぱなしだが、こちらは文言そのものが「強い」のでそのまま提示しただろう。「ヴェ~ヴェ~と応援歌が鳴り響いて『イースラー映え』する」などとヘタに説明するよりは、想像力に委ねるほうを選んで勝利。このあたりの強弱使い分けもランキングを左右する。



【7位】taraco選手(24打点)
野球大喜利界の道祖神の本質は302回戦「新井貴浩引退。ラストメッセージは、まさかの一言!」のマルチヒットに垣間見える。

・ウフフ、菊池のヒゲのちくちく、くすぐった〜い(3打点)
・「僕はCにいまちぇん!」(2打点)

まず1本目に顕著であるが、世界観と文体が独自である。俳句でいえば字余り。詩でいえば散文詩。余計な説明はすっとばし、見るものの想像力を試すフリースタイルで勝負している。これなどは「菊池のヒゲの」が入っているだけ親切である。ときに「ウフフ、涼ちんのちくちく、くすぐった~い」ぐらいの文言で打ち返してくるから、選ぶほうも良ボケを見逃すまいと油断できない。
ではそんなトリッキーな投稿ばかりかといえば決してそんなことはなく、「僕はCにいまちぇん!」のごとくセンター方向に打ち返すバッティングも難なくこなす。野球大喜利における唯一無二の珍宝である。



【8位】gull_bp選手(25打点)
303回戦、304回戦と2戦連続MVPという離れ業を成し遂げたのは特筆もの。

お題:野球バカ一味のオレオレ詐欺「おばあちゃん、オレオレ!……」
回答:オレオレ!次の回、代打でいくぞ。振り込んどけ(4打点)

お題:広島V3を機に制定の“カープ女子三ヶ条”。「カープを愛す」、「マナーを守る」、あと1つは?
回答:赤上げて 赤下げないで 赤下げない(4打点)

MVP選出の基準はいろいろある。「王道のおもしろさ」「飛び抜けたうまいこと言い」「タイムリーな時事ネタ」「単語でズバッと」「一番バカ」などなど。もちろん「全体のバランス」だったり「監督の好み」も加わるのだが、それを言い出したら野球大喜利そのものがぜんぶそうなので ひとまず置いておくとして、ここでMVPに輝ける大喜利力というのは履歴書に書いてもいいほど尊いものである。



【9位】omanjyuu3 選手(23打点)
ケータイ大喜利からの甘い刺客がついに念願のベストナイン入り。その名も、おまんじゅう選手。略せば「おう選手」。略さなくてもいい。シーズン初戦の301回戦「野球バカ専用デジカメに搭載された、あっと驚く最新機能とは?」でマルチ安打を放ち、レースを優位に進めた。その回答はこれだ。

・2割以下の打者は人の顔として認識しない (3打点)
・阪神ファンにも簡単に扱える (3打点)

基本に忠実な1本目、短いセンテンスに巧みに毒を盛った2本目。場数を踏んできたことで鍛えられたであろうシャープなスイングは多くの大喜利ーガーが見習うべきところ。下位に甘んじるつもりはない。さらなる高みを。



【10位】realbandoh選手(22打点)
東京オリンピックに「うまいこと言い」があれば、野球大喜利からは、じーはち選手とrealbandohことヲッサン選手の師弟コンビが日の丸を背負うことになる。306回戦「もしも安倍首相率いる『全員野球内閣』が本当に野球をやったら」では「石破氏を叩いて渡る采配」(4打点)という一本背負い、圧巻のうまさでMVPを獲得した。

病気療養による途中休養を宣言しながらもこの順位に滑り込んだのは流石のひとこと。しかし荒削りだった最初の頃から打席を重ねることでテクニックを洗練させていった努力の人であることは強調したい。なお第17シーズンではリハビリを兼ねて数打席ずつスタイルで復帰を模索している。我々はいつでもスタジアムで待っている。まだまだ老け込む歳ではない。


【シーズン記録(1位~30位まで)】
順位 選手名
1 ko_do_mo 56
2 G88man 45
3 marine_yamada 44
4 Sovpool23 34
4 beniimo47 34
6 gaddemukatuku42 28
7 taraco 26
8 gull_bp 25
9 omanjyuu3 23
10 realbandoh 22
11 masasi_kari 21
12 ponnieblue 20
13 adoreman 18
14 nanidekiru 12
14 mister0dos 12
16 corleone_k 10
16 springer_second 10
18 machakickRX 9
18 kenzy19690927 9
20 jimmy11037 8
20 SAZZY_KTY 8
22 baltan_r7 7
22 t_ikesan 7
22 aikawamaico_b 7
22 kamiha_0604 7
22 bue61 7
22 sandiuyonban 7
22 Chuo_Sobu_Line 7
22 matekai_oogiri 7
30 sh66sk 6
30 nimico334455 6
30 negibatake_p 6
30 ki_4_4 6
30 KSRG_2MT 6



【関連リンク】
・野球大喜利「アサ芸杯」第1シーズン結果&総評

・野球大喜利「アサ芸杯」第2シーズン結果&総評

・野球大喜利「アサ芸杯」第3シーズン結果&総評

・野球大喜利「アサ芸杯」第4シーズン結果&総評

・野球大喜利「アサ芸杯」第5シーズン結果&総評


・野球大喜利「アサ芸杯」第6シーズン結果&総評

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・野球大喜利「アサ芸杯」第9シーズン結果&総評

・野球大喜利「アサ芸杯」第10シーズン結果&総評

・野球大喜利「アサ芸杯」第11シーズン結果&総評

・野球大喜利「アサ芸杯」第12シーズン結果&総評

・野球大喜利「アサ芸杯」第13シーズン結果&総評