村田に逆転3ランがレフトスタンドに飛び込んだときのベンチの下さんの顔。それを見て全身に震えが走った。

試合中、いつも以上に余裕の表情で明るく振舞っていた下さん。
その下さんがスタンドに消えた打球の方向を睨みつけながら、不動明王のような、それでいて血の色が消えていくような…
怒りなのか放心なのか決意なのか。
降りしきる雨のなか、とにかくすごい形相でベンチにたたずんでいたのが忘れられない。

クライマックスシリーズがあるから助かったなんて、今はとても思えない。そこにあまり価値が見出せないほど、今年のペナントはどうしても欲しかった。
岡田監督以下選手のみなさんも、いまは同じ気持ちなんじゃないかな。それじゃプロ失格なのかもしれないけれども。
それぐらい強い気持ちで、犠牲をはらって全てを賭けてきたタイガースの悲壮な「ザトペック戦法」だった。

いろんな夢は幻に消え、悪夢は現実となり、ただ呆然とする選手たちとファン。
そのとき誰もが下さんの顔となる。

下を向き、苦笑いを浮かべつつ、立ち上がっては、また別の夢を探しにとぼとぼと歩き出そう。
不器用で不細工でかっこ悪いかもしれないけれど。
そんなタイガースが大好きだ。

雨が降っている。